忍者ブログ
 126 |  127 |  128 |  129 |  130 |  131 |  132 |  133 |  134 |  135 |  136 |
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

私がまだ、新宿にある専門学校へ通っていた時の事。


まだ暗いうちに始発駅から乗り込んだ車内。座ることができてホッとしていると
どこからともなく私の膝の上に、フワッとした暖かく軽いものが乗った。


猫だった。

えええええ!?


なんで?いつ?どうしてこんな所に猫が!?
様々な思いが、一瞬にして頭の中を満たし平日早朝の電車内で自分の身に突然起きた出来事に、思考が追い付かない。

猫は、当然のようにくるんとまるくなり、喉を鳴らしている。

どどどど、どうしよう(滝汗)

突然の珍客を可愛いと思う余裕も無く、ただ思わず条件反射で喉元を撫でた。

通勤電車特有の、静まり返った車内に響く、猫のゴロゴロ音。なんと奇妙な非日常なのか。


この電車は、これからどんどん東京まで行く。
これからどんどんすし詰め状態になる。

まさか、ずっと電車に乗っている訳にもいかないし、この子を連れて学校に行く訳にもいかない。更に私は新宿に行く為に、地下鉄に乗り換えなくてはならない。

恐る恐る車内を見渡す。

誰一人として、此方へ目を向けている人は居ない。
それどころか『朝の出勤前に、面倒には巻き込まれたくない』というオーラが充満していた。

まだ18歳だった私は、そんな大人の人たちには助けを求められずに、一瞬途方に暮れた。

朝日が昇り始めて、車内に光が入ってきた。ちょうど猫の背中に朝日が当たり、キラキラと輝いてとても綺麗だったのを今でも覚えている。


この状況をどうしたものか。猫を撫でながら、一所懸命考えた。


これから混み合う車内で、この子がずーっと大人しく私の膝にいるとは思えなかった。
驚いて逃げ惑い、大勢の人たちに踏み潰されでもしたら…きっと死んでしまうだろう。
乗り換えの駅で一緒に降りようか。そこで駅員さんに渡す。でも、もし逃げたら地下の駅だから、外に出られなくなるかも。電車の音に驚いて、一目散にどこかへ走って行ってしまうかもしれない。
じゃあ一体どうすれば…?
次の停車駅は、まだまだ田舎の駅だし、もしホームに飛び出したとしても、人もまだ少ない。駅自体栄えておらず、線路脇には空き地が広がってるような所だから…このまま都心へ向かう車内にいるよりも、よっぽどいいのではないか。

よし。

私は、次の停車駅で猫を降ろすことを決意し、もしかして飼い主が車内にいるかもしれないので、少し大きい声で、猫に話かけた。

『おまえさん、次の駅で降りようか』

そしてじっくりと車内を見渡す。誰しもが、私と目を合わせないように慌てて目を逸らす。やっぱり、この子の飼い主は居ないみたいだ。

腹を決めると、ようやく猫に注目する事ができた。
快速電車なので、次の駅といえどもまだ時間がかかる。その間、思う存分に肉球を堪能したり、撫でさすったりした。
更に大きい音で、ゴロゴロいう猫。なんて人なつっこい猫なんだ!うーん可愛い。何故、電車の中に居たの?何故、私の膝に来たの?子供の頃ドリトル先生に憧れて以来、ずっと思っていた事ではあったが…この時ほど、猫語が話したいと思った事はない。

電車が止まった。抱きかかえて立ち上がり、扉に向かったその時
猫は私の腕からスルリと離れ、トコトコとホームに降りて行った。一瞬こちらを振り返り、長い尻尾をピーンと上に上げたかと思うと、あっという間に走って行って、見えなくなってしまった。

私は唖然として立ち竦んでいたが、すぐに扉が閉まりガタガタと車内が揺れまた動きだしたので
唖然としたままストンと同じ席に腰を下ろした。今の出来事は、本当に起きた事なのかすら分からずに。


こんなにインパクトのある話を、何故だかあれから10年以上も忘れていたのに、
今日また何故だか急に、思い出したのです。
あの時の私は、あれで良かったのかな。行動、間違ってなかったんかな。あの後あの猫は、どうなったのかな。幸せに暮らしただろうか。それともあれって、夢だったのかなぁ…?

肉球の感触や、朝日が当たってキラキラした毛、それにあのゴロゴロいう喉を鳴らす音、どれもハッキリと思い出したんだけれど。

拍手

PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
♥ Admin ♥ Write ♥ Res ♥
Copyright ©  日々の欠片  All Rights Reserved.
*Material by *MARIA  / Egg*Station  * Photo by Kun  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]